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【提供:下野新聞社 平成19年2月11日掲載】

裁判員制度全国フォーラム2007 in 栃木

■裁判に市民感覚を反映
 裁判員制度の理解を深める「裁判員制度全国フォーラム2007in栃木」(最高裁判所、東京高等裁判所、宇都宮地方裁判所、下野新聞社、全国地方新聞社連合会主催)が1月20日、宇都宮市文化会館小ホールで開かれた。同制度は国民が重大な刑事裁判に参加して、証拠に基づいて裁判官と一緒に被告人が無罪か有罪か、有罪ならどんな刑にすべきかを議論(評議)し決定(評決)する制度で、2009年5月までに導入される。この日はビデオ上映に続き、宇都宮地裁の井上泰人裁判官が裁判員選任手続きのポイントを解説。アドバイザーとして法曹界三者が出席したパネルディスカッションでは、約360人の参加者と同制度の意義や疑問について考えた。同フォーラムの本県開催は、昨年に続き2回目。

「裁判員に選ばれるまで」

宇都宮地方裁判所刑事部裁判官
井上 泰人

■過重負担ないよう配慮

 衆議院議員の選挙人名簿から毎年、抽選で翌年の裁判員候補者の名簿を作ります。名簿に登載された人にはその旨の通知と、就職禁止事由など裁判員になれない事由や客観的な辞退事由があるかどうかなどを尋ねる調査票を送ります。

 裁判員候補者名簿の中から、事件ごとにさらに抽選で裁判員候補者を選びます。裁判員候補者に選ばれた人には裁判所に来てもらう日時を通知(呼び出し状)し、裁判の時期や期間を前提とした辞退事由がないかどうかなどを把握するための質問票を送付します。

 裁判所では、裁判員候補者の中から、裁判員を選ぶ選任手続きが行われます。裁判員になれない事由がないかどうか、辞退希望の場合はその理由などを裁判長から質問されます。裁判員になれない事由がある人や辞退を認められた人は、不選任の決定がされます。

 また検察官と弁護人は、裁判長の質問の結果などを基にそれぞれ法律で決められた範囲内で、裁判員候補者から除外されるべき人を指名(不選任請求)できます。

 裁判所での選任手続きで、裁判員候補者から除外される人を決定し、除外されなかった裁判員候補者の中から、最終的に事件ごとに6人(必要な場合は補充裁判員も選任)の裁判員が選ばれます。

 裁判員は、広く国民に参加してもらう制度です。原則として辞退できませんが、負担が加重にならないよう法律で辞退事由を定め、国民の事情も考慮しています。調査票や質問票にうそを記載せず、また裁判長の質問にも事情を率直に伝えていくことが大切です。(井上裁判官の「選任手続きポイント解説」などをもとに要約)

パネルディスカッション

「わかる。裁判員制度。」

【パネリスト】

野中 淳一(のなか・じゅんいち)(キリンビール栃木工場長)

東大農学部卒。1978年キリンビール入社。取手、岡山、横浜、名古屋の各工場を経て、03年にキリンウェルフーズ社長。06年9月からキリンビール栃木工場長。

鹿島田 千帆(かしまだ・ちほ)(エフエム栃木アナウンサー)

エフエム栃木アナウンサー。現在朝のワイド番組「B−UP」や車・レース番組のパーソナリティーを担当。番組制作ディレクター、プロデューサーも担当。

小島 典子(こじま・のりこ)(自営業)

東京都出身。結婚後、23歳の時、栃木県に移り住む。お茶販売業「静岡銘茶駿河園」経営。趣味は30年以上続けている押し絵。ヨガ、アクアビクスにも取り組む。

【アドバイザー】

井上 泰人(いのうえ・やすひと)(宇都宮地方裁判所刑事部裁判官)

1995年大阪地方裁判所判事補。外務省条約局法規課検事、在オランダ日本国大使館1等書記官を経て、06年4月から宇都宮地方・家庭裁判所判事補。

自見 武士(じみ・たけし)(宇都宮地方検察庁検察官)

1995年東京地方検察庁の検事に任官。札幌、広島、東京、浦和、静岡の地方検察庁検事を経て法務省民事局付き検事。05年4月から宇都宮地方検察庁検事。

橋本 賢二郎(はしもと・けんじろう)(栃木県弁護士会弁護士)

1992年東京弁護士会登録。県弁護士会に登録変更し、2000年度副会長を歴任。05年4月から県弁護士会改正刑事訴訟法等対応プロジェクトチーム副委員長。

【コーディネーター】

綱川 榮(下野新聞社論説副委員長)

野中 淳一 鹿島田 千帆 小島 典子 井上 泰人 自見 武士 橋本 賢二郎

■役割が見えにくい/野中
■人を裁けるか不安/鹿島田
■困る長期間の拘束/小島
■普通の判断が重要/井上
■証拠厳選して臨む/自見
■身近な裁判に期待/橋本

綱川:最初に、裁判員制度をどう思っているのか、お尋ねいたします。

小島:私は裁判所で模擬裁判を経験し、架空とはいえ、人の人生を左右することに素人が参加して、どうなるのかと心配でした。

野中:裁判員6人と裁判官3人がチームで作業を行っていくいうことですが、それぞれの役割が見えにくいように思います。

鹿島田:裁判員になったら、被告人を前にどう判断したらいいのか、人を裁くという重大な責任を果たせるのかが不安です。

綱川:裁判員は実際に何をするのか、疑問があるようですね。鹿島田さんは判断に不安を持っています。

井上:証拠に基づいて悪いことをしたのか、悪いことをしたのならどういう刑罰が適当なのかを裁判員6人と裁判官3人で判断します。これらは、専門家でなければならないことではなく、皆さんの普通の感覚を反映させることで、より深みのあるものになると思います。

綱川:裁判員制度の意義をお話しください。

井上:判決のプロセスに国民の感覚や意見、意識が反映されれば、社会での判決の受け止められ方が変わって、より自分たちのものとして受け止めてくれることが期待されます。

橋本:裁判が身近になって、社会に果たしている法律の機能を直接認識できます。そういう経験が裁判員になった人から周りに広まり、社会に法律が目指している秩序がより浸透する効果が期待できます。

綱川:罪を犯した人とかかわることに、一般的には抵抗がありますね。

鹿島田:裁判のいかんによっては報復という不安があります。一人暮らしの女性や、お子さんのいる家庭ならお子さんや家族への嫌がらせが心配です。

井上:既に法律が作られていて、裁判員の氏名や住所は秘匿されます。また裁判員が裁判所で述べた意見は、絶対漏らしてはいけません。漏らした場合は刑事罰が科されます。

自見:脅迫などがあったら、警察庁と連携して徹底した検挙を行い、安心して参加できる環境を整えていきたいと思います。

綱川:裁判員に選ばれたとしたら、どういう疑問や不安がありますか。

野中:判断の基となる証拠が、一般の市民でも理解できる形で提示されるのかが疑問です。また専門用語の理解に苦しむようでは、評議に入っていけないという不安もあります。

自見:証拠の厳選が重要ですから、必要最小限の証拠で事件の概要を説明し、理解してもらえるように検討を進めています。

井上:専門用語をできる限り分かりやすくかみ砕いて、どうしたら皆さんに理解してもらえるか、試行錯誤を重ねています。

小島:模擬裁判で受けた第一印象は、専門知識を持っていなくても大丈夫ということでした。スライドなどを使ってくださり、分厚い書類を読まなくても目で見て分かりました。

綱川:現実的な問題として共通するのは、裁判員の負担だと思いますね。

小島:自営業をしていますから長期間、拘束されると困ります。人によって違うでしょうが、3日ぐらいがいいと思います。

自見:迅速な裁判のため一昨年から、裁判が始まる前に検察と弁護側が主張を出して争点を整理し、提出する証拠や証人などを決めて臨む公判前整理手続きが導入されました。通常は3日程度で終わるようにしたいと考えています。

野中:私どもの工場では年間十種類以上の新商品を出していますが、そのプロジェクトで大きな役割を担っている人が1週間も抜けると、新商品を出せなくならないかという不安があります。

橋本:弁護士としても裁判を迅速に終わらせることを考えていますが、被告人が犯罪事実を争っている場合はその意向に沿って争うべき点を争い、審理していただく態度で臨むことに変わりはありません。

井上:裁判員が参加すべき事件は2005年、栃木県で58件でした。裁判員は1事件6人ですから、1年間に約350人が選ばれる計算です。

調査では約7割の事件は3日以内、9割の事件は5日以内に裁判が終わっていますから、裁判員の負担も9割の事件は5日以内というのが今のデータです。

綱川:鹿島田さん、疑問は解けましたか。

鹿島田:小さなお子さんのいる家庭や介護を必要とする家族がいる家庭、また最近多い派遣社員の方が裁判員に選ばれた場合、どうなるのでしょうか。

井上:地方自治体などの介護等の部局とも協議し、育児や介護を抱えている方も、心おきなく参加できる環境づくりに努力しています。派遣労働者は、派遣会社と受け入れ会社の意識の問題だと思います。

綱川:裁判員は、辞退を認められるケースもありますね。井上さん、辞退事由をご説明ください。

井上:辞退できるケースには、70歳以上の方や学生などがあります。一番の関心事は、仕事を理由に裁判員を辞退できるのかということだと思います。私たちは、皆さんのニーズや要望をできる限り配慮します。しかしうそを言って逃れる方は、厳しく対応しなければと思っています。

綱川:貴重な意見とアドバイスをいただき、ありがとうございました。

※掲載にあたり、出席者などの敬称はすべて省略させていただきました。

<主催>

最高裁判所、東京高等裁判所、宇都宮地方裁判所、下野新聞社、全国地方新聞社連合会

<後援>

法務省、最高検察庁、東京高等検察庁、宇都宮地方検察庁、日本弁護士連合会、栃木県弁護士会、法テラス栃木(日本司法支援センター)、栃木県、宇都宮市、栃木県経済同友会、栃木県商工会議所連合会、栃木県産業協議会、とちぎテレビ、エフエム栃木、栃木放送、NHK宇都宮放送局、共同通信社

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